お知らせ

英語英文勉強会をオンラインにて開催しました

英語英文勉強会 「グローバル化時代の英語教員養成」

日時:2023年3月25日(土)13:30~15:30(オンライン開催)
講師:野田 小枝子 先生 (津田塾大学文学研究科教授)

今回の勉強会では、以下のアウトラインに沿って講演が進められました。
1. グローバル化時代の英語教育とは? 2. 英語カリキュラムはこれからどうなるべき? 3. カリキュラムと教授法との関係性 4. カリキュラムと教科書との関係性  5. 外国語カリキュラムのための8原則  6. 今、教員養成のためにできること

グローバル化の意味は世界と日本では異なる。斎藤他(2016)によると、グローバル化とは、「国家の枠組みと国家間の壁を取り払い、政治、経済、文化など、様々な側面において地球規模で資本や情報のやり取りが行われること」である。しかし、日本におけるグローバル化のイメージは、「英語圏文化の価値観を共有すること」になっていないだろうか。文部科学省は「グローバル化に対応した英語教育改革実施計画」(2014)を発表したが、英語使用に重点を置いた教育はグローバル化が一方向への移行になる危機感がある。グローバル化時代の英語教育とは、「グルーバル人材」の育成ではなく、「グローバル市民」を育てることである(斎藤他、2016)。
言語教育のカリキュラムの基盤となる考え方は時代によって変わるが、中でもこれからのkeyとなるのは、教師が教え込むのではなく、様々な活動を通して生徒が学び成長するprogressivismと、文化多元主義・異文化間コミュニケーションに主眼を置いたcultural pluralismである。
カリキュラムにはcurriculum as product(実施する決まり事としてのカリキュラム)とcurriculum as process (Aoki, 2004) がある。curriculum as processは考える要素を取り入れた問題解決活動を重視し、生徒の学びを中心に据えたものであり、教師の役割は生徒とinteractしながら授業を変えていく、つまり自分のカリキュラムを創造する (Clark, 1987) という点で、血の通ったlived curriculumである。評価には、assessment of learningではなく、よりよく学習するためのassessment for learningを用いる。従って形成的評価になる。グローバル市民を育てるためのカリキュラムは、curriculum as productだけにとどまらず、curriculum as processを楽しむことが重要である。これはAIにはできないことである。
カリキュラム開発は、1)生徒の必要を見極める、2)狙いや目標を定める、3) 適切なシラバスを決める、4)評価を行うの4段階で行う (Richards, 2017) 。教科書はカリキュラムに応じて作成されているが、教師にはどのように授業を進めるかが問われている。
シラバスには何をstrands (より糸) として構成するかによって、grammatical/lexical/
functional/situational/topical/skills/text-based/integrated syllabus (Richards, 2001) がある。教師はどのstrandsを強くするかに沿って自分に合うシラバスを作成する。strandsには表れないが、期待される非言語的な効果、特に、自信、モチベーション、メタ認識、自己効力感は重要である。
Macaro, Graham, & Woore (2016) はイギリスにおける外国語学習のカリキュラムデザインのために、次のような8原則を提唱している。
1)Oral Interaction(意味の交渉)2)Oral Interaction(自発的発話の促進)3)Oral Interaction(自発的な交渉が少なくとも、authenticなものを見つけIRF(initiation-response-feedback)構造に入れ込む)4)Oral Interaction(ストラテジーの明示的教授)5)Reading and Listening(challengingなテクストの使用)6)Self-efficacy and Motivation(自己効力感とモティベーションの向上)7)Writing(既知の言語とストラテジーを用いて数多く書く、エラーをすべて直すことに意味はない、生徒自身の修正やピアでの修正が効果的)8)Developing Language Skills(言語技能の向上の助成、今日何ができるようになったかreflectionすることが重要)

以上のように、グローバル化時代の教員養成のためには、グローバル市民への認識を持つこと、何をすべきかのvisionを持つこと、カリキュラムへの知識を持つこと、シラバスを作っているstrandsを意識すること、8原則のうち自分に今必要なものを取り入れることが求められる。

グローバル化時代の英語教育とは「グローバル市民」を育てることであり、そのための指針を示して下さった野田先生の英語教員養成に対する熱い思いを改めて感じることができました。curriculum as processは学習者を中心に考えるものであるが、カリキュラムの作成を担う教師の役割は大きく、それはAIにはできないという言葉には勇気づけられました。野田先生の指導を受けた英語教育関係者の参加が多く、感想からもそれぞれの経験から得た知見を先生の話に重ね、認識を新たにしたことが伺えました。次の世代につなげるために教師として学び続けることが大切であるという力強いメッセージを受け取った勉強会でした。 

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講師の野田小枝子先生

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