お知らせ

国際関係勉強会をオンラインにて開催しました。

国際関係勉強会 2022年10月22日(土)13:30~15:30
ビーズが繋ぐ地域―地域の広がりと人々の思いをビーズから学ぶ―(Zoom開催)
加納 弘勝 先生(津田塾大学名誉教授)

今回の国際関係勉強会は、中東の研究者でいらっしゃる加納先生が、社会学の観点からビーズが繋ぐ世界について、千駄ヶ谷キャンパスからオンラインでご講義して下さいました。
先生は、世界中を旅され、社会で暮らす人々の価値観や社会規範を実際にその地で学ばれ体験された事を元に研究をされてきました。そして、その中で人々の希望や願いに関心を持たれ、それを知る手段としてビーズの研究をされています。先生の豊かな実体験に基づくお話に加え、様々なビーズの写真や先生の貴重な蒐集品もお持ちくださり、大変わかりやすく講義していただきました。「2000年前に地域に生きた人々の願いと営みを小さな胎に凝縮させ朽ちることなく人々に持ち続けられ過去を現代につなげる。ビーズの気泡の中には、その時代の空気がそのまま閉じ込められて今に至る」冒頭のこの説明で、一気に加納先生のビーズの世界に引き込まれた方も多かったのではないでしょうか。

まず初めに、先生は津田仙氏が明治8年に創立した学農社及び「農業雑誌」によって繋がれた地域及び人々について話されました。津田仙氏の唱えた「農は百工の父母」「自由を重し」とする精神は各地に広がり、北海道開拓に携わった人々にも影響を与えました。その中のアイヌ出身者でアイヌ最初のプロテスタントである金成太郎(かんなりたろう)、アイヌの子供達のための学校である相愛学校を創りアイヌの教育に尽力した人物、の活動を津田仙氏が支えた記録があり津田仙氏の考えである「これこそ自分たちの住む世界を願う」という教えは、地域に根付きその発展に貢献したと解説されました。

次に、日本のビーズであるアイヌ玉と江戸のトンボ玉の説明をして下さいました。
アイヌ地域に集積した無地玉、特にその中でも青のビーズが好まれました。北海道でガラス玉が作られることはありませんでしたが、初めは中国から、のちに本州から集められたビーズは、アイヌ民族独自の首飾りを作るのに使われました。玉を連ねたタマサイ、円形の胸飾りがついたシトキの二種類の首飾りはアイヌ民族の宝物であり、一家の魔除けとして母から娘に受け継がれてきました。特にシトキは 金属製の飾り板(シトキ)が玉の心臓、それぞれの玉には頭玉、頸玉、手玉、など人体の名称がつき、重要な宗教儀式の時に用いられました。青玉の多くは大陸から交易により持ち込まれたものであり、アイヌの女性が一年働いてようやく玉一連(50粒)を手に入れることができました。アイヌの人々のアイヌ玉への思いの深さがよくわかりました。
一方、江戸のトンボ玉はあくまでも装飾品の域を出ることはなかったと先生は言われます。町人文化が栄えた江戸において、玉は印籠 、簪、櫛の緒締や飾り物として需要が急増しました。南蛮貿易を通じて中国とヨーロッパのガラス技術が伝えられ、長崎や大阪でガラス玉が製造されはじめ、その後、とくに江戸で製造され流行しました。ビーズの模様のモチーフとして、金魚、糸くず、流水、小紋などが描かれ江戸末期にはヴェネチア風や引っ掻き模様も見られ、先生は一つ一つの模様を写真と照らし合わせて詳しく説明して下さいました。

世界に目を向けると、有名なヴェネチアンビーズは、15世紀頃からヴェネチアで作られたビーズの総称で、交易品としてアフリカに渡り宝石や奴隷などと交換されていました。またヴェネチア製のアレッポビーズは中の黄色が透けて見え独特の赤い色が美しいビーズで、その名前はアレッポがシルクロードの重要な拠点であったことに由来しますが、その繁栄もシリア政府とロシアによる破壊で証だけになってしまったと残念そうにおっしゃいました。先生の解説で、ビーズを知ることはその背景にある政治や社会を理解することであり、時を超えビーズに込められた人々の願いに想いを寄せることであると教わりました。

最後に、スペインのカディス博物館の蝉と蜂のビーズ、中国の玉蝉、メキシコのマヤ文明の芋虫のビーズ、クロアチアの碁石風のゲーム・ボード、ウクライナのビーズ、ミャンマーのピュー族の象のビーズなど、先生が世界の博物館で見つけられたり、入手された様々なビーズの紹介をして下さいました。

ビーズの中にある宇宙に魅せられ 、世界中をビーズと共に旅したような一時間半でした。人々がどんな思いでビーズを作り、それが時を経て願いや祈りの道具となり、時には護符としてまた装飾として人々と深い関係を持ってきた歴史を知ることができた勉強会でした。

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講師の加納弘勝先生

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